カテゴリー「小説>まだ無題です」の記事

2006年1月15日 (日)

無題⑥

また夏が来て、季節は秋へと変わった。

あくまでもカレンダー上であるけれど。。。

マツムラは心頭滅却すれば火も又涼しかなと苦笑いした。

本日の気温は30℃超えを記録している。部屋の中でエアコンも付けずに一人で汗をだらだらと流しながらただただ俯いている中年男。

よく見れば手紙のような物を広げて眺めている。

「もう頑張れません。せめて娘と同じ日にいかせて下さい」

短い手紙であった。

マツムラの妻はあの衝撃的な一年前の出来事に負けてしまった。娘の居ない生活を急に宣告され、そして愛する娘を腐敗するからと別れもロクにする間もなく別れたあの日。。。

娘が居なくなってからの一年は地獄であった。心の中が地獄だっただけて何も知らない人は「大分お元気に成られましたね」なんて、本当に息を吸うのも精一杯のマツムラにねぎらいの言葉を掛ける。

正直他人の優しさは迷惑以外の何物でもなかった!

妻が同じ日に逝ったお陰で二人の悲しい死の記念日は年に一回となった。

20代の最後に買ったこの一軒家・・・・小さな一軒家であるが、今のマツムラにとってはとても広く感じる。もう築15年と成るこの家は一人で歩くとキシム音を感じたりする。三人で居た時には何も感じなかった音。

今は、無音よりもこの音に助けられる気がする。

昨日は激しい雨だった!今日は確かに暑いがもう蝉は鳴かなくなった!もう秋である。。。

      

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2006年1月14日 (土)

無題⑤

リナは目の前に飾ったアメリカンブルーに自分の好きだった人の名前を教えてあげた。

「タケ・・・シさん」一年ぶりにその単語を口にした気がする。しかも最後は別れの言葉であった。

「初めから(遊びだって言う事は)解かっていたんだろ?」あの時リナは昼ドラにでも有りがちなこの言葉を放つタケシがふざけているとばかり思っていた。しかし目を見ると本気であった事が解かる。しかも指先までが本気であった!なぜなら、銀行の袋に入った薄っぺらな封筒が差し出されていたからである。

タケシはこれで責任を果たしたかのような顔をしている。もう何も話す事は無いの?リナは言ってみた。少し話し出したら止まらない!

「何で、遊びだったならゴムなしてセックスなんかするの?私はずっとアナタが本気だと信じていたから、私との赤ちゃんが欲しいと思っているって信じてから避妊しなかったって!何で?大人なのにそんな事も解からないの?」リナは初めて自分の考えた言葉でタケシを責める。

タケシの指先の封筒がぶらぶらと揺れる!

「ゴムしたら、白けるだろ?ん?いいから、このお金は(お腹の子を)処分するのに使ってよ。手切れ金みたいなモンだから。」

タケシの心はリナには無い事がはっきりと解かった。リナは観念する。

一生恨むから!リナはタケシの後姿に一言、伝えた。

ある意味、リナの「一生恨むから」それはあながち嘘では無かった。タケシが妻に捨てられた話が耳に入ってきたのは元同僚から自然と耳に入ってきたからである。もちろんリナは同僚から話を聞くまでもなく、本当は一番最初に知っていた。何故なら、リナは彼女の妻と面識が有った。正確に言うと、面識を作ったのであるが。

リナの心は過去へと旅をする!

術後一週間してから、リナは心なしか落ち着かない気持ちで一杯にになっていた。

携帯の地図のサイトを慣れない手つきで見ながら、以前彼と同じ会社に勤務していた頃の名簿で控えた住所を打ち込み、住宅街に入る。

小さな家ばかりが立ち並ぶ町並み。それぞれの家には小さな庭らしき物も有り、そしてピンクのコスモスの花が咲いている門のある家の前へと立ち止まる!

リナはブザーを鳴らす!

表札はホームセンターで買ったような平仮名の文字を当てはめたほのぼのとした物である。出てきたのは知らない女性であった。

表札の連盟の片割れである。

リナはタケシさんと話したいんですが?居ますか?と聞く。この頃は曜日感覚のないリナであった。平日の日中に勤め人のタケシが居るはずはない。

リナの目の前の女性は近所の目を気にしたのか、周りを気にする素振りを見せてリナを自宅の中へ案内した。嫌な沈黙が続く!

「私は・・・・」リナは口を開く!

リナは先週、タケシから10万円を貰って中絶した事を話した。

そしてこのままでは、水子霊に呪われるので名前だけでも付けて貰おうと思って来た事を話した。

家の中には手作りと思われる布製品に溢れている。専業主婦と思われるこの女性は夫の帰りを待ちながら凝った作品で埋め尽くしているのだろう・・・・

リナは用件を伝えてすっきりとした。希望は赤ちゃんの性別は解からないから男でも女でも可笑しくないような名前にしてくださいと言って帰る事にした。

女性は色白な方だ。

しかし先ほど玄関で逢った時には幸せを手に入れた独特のオーラが漂っていたのにリナが帰る頃には蝋人形の様に化学変化していた。

      

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2005年11月14日 (月)

無題④

マツムラは目の前の箱に入った娘に何と声を掛けてイイのか解からなかった。一昨日までは一緒に夕食を食べて、そして何か言いたげなそぶりを見せていた。妻は「ハルカは年頃なのかしらね?たまには話でもしてあげてよ。」そう言われた矢先の出来事だった。

マツムラはまだ声を掛ければ返事をしてきそうな娘の顔をもう一度眺める。

妻はというと、泣いてばかりで、どう声を掛けてイイのか解からない・・・

娘は自殺をした。たかが13年しか生きていないのに・・・聞きたくもない解剖結果も聞かされる。

「お嬢さんは・・・4カ月でした」マツムラは意味が解からない。娘は確かに最近は物思いにふけている様子が有った。しかしそれは思春期特有の物だとばかり思っていた。まさかうちの娘が?妻を責めたい気持ちに一瞬かられる。実際、解剖結果を聞いた時には妻を初めて平手打ちをした。そして、すぐに後悔したけれど・・・

真夏は早く傷むから・・・・マツムラの姉がそう言う。そんな事は百も承知である。マツムラはもう本日、焼くしかない娘の顔を最後に棺の中から眺め、そして最後に釘を打つ・・・・

真夏の気候が憎い!

蝉の声も全て、無いものとしたい。それどころか自分の今の気持ちと同じ温度で娘を冬の世界へ連れて行きたい。。。。

釘を打ち付けた後、妻は今まで以上に取り乱した!地面に背中を付け、顔を両手を広げ押さえつけ、そして泣き喚く妻・・・指の間から見える真っ赤な目も、そして口の脇から溢れ出る泡も、まるで地獄のようである。親戚だけでなく、葬儀屋までもが妻を抑えて、そして宥めている。妻はあやされた子供が、更に調子に乗って泣き叫ぶように今度は咳をしながら泣き叫ぶ。「ハルカが見ているから」マツムラは出来る限りの優しい声を出し、そして妻に声を掛ける。今は自分の感情は後回しである。なるべく客観的に自分を見るように努力する。妻の口が声にならない動きを見せる。本当だったら、言葉になっていたのだろう・・・その動きは「あなたは家庭を省みなかった」そういう動きに見えた。

マツムラは泣かない。心臓をわしづかみにされた気持ちには変わりは無いが、今はまだこの現実を理解できていない。。。。それに、自分の分も妻が泣いてくれている。何故娘は妊娠していたのか?まだ子供で有ったではないか?

そう思っているうちに、棺は焼却炉へと向かっていく・・・

もう娘は確実に居ない!

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2005年9月23日 (金)

無題③

リナはフラフラする身体で支払を済ます。10万円は彼がくれたお金で有った。手切れ金・・・

「無理だから。解っているだろ?」と言われて、初めてリナは自分の立場が解った。遊びの対象・・・解っていたけど、考えないように生きていた。この日までは。

あまり考えなければいいものを思考能力の無い頭でリナ自分の現状を呪った。一人で中絶するのは虚しいな。あんなに気持ちよかったセックスも全てが悲しく感じてしまうな。私って何処から間違えた人生を歩き始めたんだろう。。。あんなに人生のプランを考えていたのにな。。。

もう戻ってこないであろう彼の顔を少しだけ思い出した。考えたくなかった。支払を済ませたリナはおつりをもらい、サイフにしまうのも面倒だったので、ポケットにそのまま仕舞った。

玄関を出たリナはもう一度病院の中に戻る。靴を履くのを忘れていたからだ。それほど自分の現状をしっかりとした頭で考えられないほど、麻酔は残っていた。

リナは眠たげな目を開いて家路を急ぐ。もちろん回りの誰よりもスロ~モ~ションだったけれど。新緑の青さと夏にはまだ早いのにティシャツを濡らすほどの汗が今日のリナには辛かった。

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2005年9月15日 (木)

無題②

耳元で声がする。女性の声。

「自分の事を大切にしなさい。生きていて一番今が辛いでしょ?」中年の声だった。

リナは少しだけ吐き気を覚えながら、うんそうだねと同意していた。残念な事に話しかけていた中年の声はリナにめがけて言ったものではなく、カ~テンを隔てた自分と同世代か若しくは自分より若いと思われる女性に対して言って居た言葉であった。覚える吐き気。運の良い事に枕元には洗面器が有った。リナは吐くものが無いのに一生懸命洗面器の中に顔を突っ込んで吐く真似をしてみた。

「無理。吐けない」もう一度今度は、中指を喉の奥に突っ込んで吐くように努力した。少しだけ胃液の様なものが出た。出たことで安心したリナは今の自分の状況を思い出す努力をしていた。

はっ!!!!私は取り返しのつかないことをしたのよね!!!私は・・・子供を堕胎した!

ふらふらする体を気丈に起こして、真っ白なこの世界から出て行きたいと思った。

「看護婦さん、看護婦さん・・・」声は上手く出ない。私は死んだの?いいえ、私も死ねばよかったの?そんな感情に襲われ始める。カ~テンを隔てた隣の女性が羨ましくなった。例え説教されても誰かが側に居る。それに比べて自分は一人で始末と言う名のカッコイイ言葉で名も無い命を処分し、そして自分は昨日と全く違う状況に成った事に戸惑いを隠せない。それより、こうして一人で白いこの場所に居るのが耐えられない・・・

巡回の看護婦がやってきた。リナはさっきより出始めた声を出して「もう帰っていいですか?」と聞いてみた。立てたら着替えて帰っていいですよと、事務的に言われた。ベットから降りてみた。確実に立てる。ちょっと目まいを覚えるけど立ち上がって着替える事にした。もうこの白い部屋には居たくなかったから。

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無題①

あら?セミの声が無くなったのね?もう今年の夏も終わったのかしら?強い残暑の9月の中で、リナは昨日とは変わった風に秋を見つけた。

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